沖縄懇話会30周年記念誌
138/160

■要請書(第2回定時総会で採択)138沖縄県の振興開発につきましては、平素から格別な御高配を賜り深く感謝申し上げます。さて、沖縄懇話会は地元沖縄と本土の経済人による協力交流の場を通して沖縄県の抱える諸問題を取り上げ、その実現にむけて努力せんとするものでありますが、第二次沖縄振興開発計画が来年5月で満了するにあたり、国におかれましては「沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律」を継続延長し、また「沖縄振興開発特別措置法」を既存の課題だけでなく21世紀を睨んだ新たな課題への対応策も含めて改正延長することにより、第三次沖縄振興開発計画を早急に策定し、沖縄県の振興開発を支援して頂きたく、ここに貴職のご尽力を要請いたします。昭和47年の本土復帰以来、沖縄県は本土との格差是正や自立的発展の基礎条件の整備を図るため、「沖縄振興開発特別措置法」や「沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律」に基づき諸施策が講じられてきました。この間、沖縄県の経済社会は、所得格差の縮小や社会資本の整備が進展し、総体として着実に発展してきております。しかしながら、両次にわたる振興開発計画では十分にカバーしえず、生活・産業基盤においてまだまだ開発を要する分野も多く、また県民所得や失業率も改善されてはいるものの、さらに改善努力が必要とされております。そしてなによりも経済的自立を果たすうえでの産業開発は、亜熱帯農業への取り組みや観光産業などで成果がみられるものの、依然として厳しい特殊事情も影響し、最も遅れた分野となっております。このため、引き続き立ち遅れている分野の格差を是正し、また自立的発展の基礎条件を整備することにより活力ある地域社会を形成していくため、諸々の施策を推進していくことが不可欠であります。一方、内外の政治・経済環境は大きく変動し、それに伴い沖縄県民が積極的に担っていかねばならない新たな役割も明確となってきました。わが国は国際社会への貢献が期待されており、また国民の生活意識、価値観の多様化に伴い、ゆとりと潤いのある生活環境の整備などが求められております。ひるがえって沖縄県は、豊かな亜熱帯・海洋性自然と特有の伝統文化・歴史的蓄積を有しており、今後沖縄県がこれらの地域特性を活かし、県内経済社会はもとより21世紀の展望の中で、広くわが国の社会、経済、文化の発展および世界へも貢献しうる特色ある地域としての経済社会発展の方向を目指す必要があります。すなわち、沖縄県の地域特性を活かした産業開発として、第一に国際的規模の観光・保養地域の形成が挙げられます。既に民間での取り組みや自助努力などにより主要産業として成長しておりますが、基盤整備や環境面での課題も多く、公的部門の役割が不可欠であります。第二にバイオマス資源の研究及びバイオ産業の振興でありますが、将来有望な産業であり、いくつかの芽出もみられます。第三に情報サービス産業の振興でありますが、全国的にソフトサービス面での需要の高い伸びが見込まれる中で、地元の豊富な若年層を活用できる分野と期待されます。これらバイオ産業や情報サービス産業につきましては、トロピカルテクノセンターをはじめ産官学一体となった取り組みによってさらに推進する必要があります。また、東南アジアをはじめ諸外国との国際交流拠点の形成については、既に沖縄国際センターや沖縄コンベンションセンターが設置され、順調に運営されておりますが、63年に開設されました沖縄自由貿易地域については課題も多く、今後特色ある自由貿易地域として形成を図らねばなりません。さらに熱帯地域に関する学術研究や技術移転を通してアジアの発展へ貢献していくことも必要であります。また県土の均衡ある振興開発のため基地返還地の有効利用が課題となっておりますが、国の特段の支援なくしては、円滑に進■できるものではありません。以上のような沖縄の振興開発を推進していくには、県民の自助努力が主体となるのは勿論でありますが、県内外の民間部門の英知の結集に加え、国がこれまでの諸施策を更に強力に展開していくことが不可欠と思量されます。沖縄懇話会代表幹事 牛尾治朗代表幹事 崎間 晃平成3年12月17日声明文・要請文

元のページ  ../index.html#138

このブックを見る